白糸台高校・麻雀部監督の日誌-2-

記入日:2010年04月15日

1 照が白糸台高校に入って一週間が経った。

 予想通り、麻雀部では全戦全勝という恐ろしい成績を叩き出している。部内のランキングで1位になるのも時間の問題だろう。

 白糸台の部内ランキング上位の部員は部内に存在するチームに振り分けられることになる。照は当初の予定通り、チーム虎姫に所属することになった。

 白糸台のレギュラーメンバーの選出は部内にあるチームで対抗試合を行い、勝ったチームがレギュラーとなる方式を採用している。そのため、レギュラーメンバーは必ずしも部内トップ5が選出されるわけではない。

 噂には聞いていたが、本当にこんな馬鹿げた方式を採用していることを知ったときは頭が痛くなった。こんな阿呆のようなことをしているから、選手と環境は恵まれているのに地区大会突破を二年連続で逃したのだろう。

 監督いう立場上、こんなシステムは直ちに撤廃――したいところだが、そうは問屋が卸してくれない。監督という立場は殆ど名目上のものであって、実権を握っているのは後援会の一部の面々だからだ。

 白糸台高校に巣食う癌とは、その後援会の一部の面々だ。彼らは数年前から白糸台麻雀部に部内チームという制度を設けさせ、それぞれがオーナー気取りでチームを競わせている。白糸台の環境が整っているのは彼らが出す金のおかげではあるが、口も出してくるために部内は滅茶苦茶になってしまっている。

 環境が整っているとはいうものの、招かれているコーチ陣はそれぞれ担当のチームが決まっており、他のチームの選手にはアドバイスの一つもくれない。監督は私一人ではあるが、実質的にはオーナーの意向を受けてチームの管理を代行しているコーチ達も監督と言って差し支えないだろう。

 私も立場上は他のコーチとは変わりがない。私のスポンサーはチーム虎姫のオーナーに当たる人物で、チーム虎姫は今年から私が担当となっている。ちなみに部内にチームを設けるという碌でもない発案をしたのは虎姫のオーナーだ。さっさと死ね。

 とはいえ、それに反発するほど私も若くはない。そもそも虎姫オーナーの口利きがあって白糸台の監督につくことになったのだから、表面上は営業スマイル浮かべてオーナーの意向を聞くしか無いだろう。照にはこういう大人になってほしくない。まあ人間社会に生きる以上、大なり小なりこんな目にあうのは確実なんだけれども。

 私の最終目標は白糸台高校麻雀部の健全化を図ることだ。日本屈指の麻雀名門校という立場を維持したままで。そうでなければ、あの子が浮かばれない。白糸台の監督になれるんです、と本当に嬉しそうに白糸台の未来図を語ってみせたあの子が。

 そのために後援会から金は搾り取り続ける。ただし、チーム制は有名無実化させる。白糸台高校はチーム虎姫の一強であればいい。虎姫が10年連続レギュラーを勝ち取り、10年連続インターハイ優勝すれば流石に他のチームのオーナーは萎え、うまくいけばチーム制自体が無くなるかもしれない。

 10年連続で実績を上げ続けるなど我ながら無茶にもほどがある。ただ、後援会の説得が不可能である以上、それに近いことは達成する必要があるだろう。

■追記
 体重が1キロ増えた。同居人と食べてるものは殆ど変わらないどころか、向こうは甘いものばかり食べていてもまったく太る気配が無いというのに。

 いまも幸せそうな顔でショートケーキを頬張っている。非常に恨めしい。


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