三尋木咏・回顧録覚書-11- 「三尋木咏、やらかす」

Date:2019年6月17日(月)

3 監督はロリコンで酒に弱くて脱ぎぐせのある変態で人間としてどうかと思う人ではあったけど、その能力に関してはそこそこは信頼してた。

 監督業始めるちょっと前まで現役のプロとして活躍していただけあって、他チームの選手事情にも詳しいし、練習で打っても現役相手に勝ち越す腕を持っていた(ただし私には全敗)

 しかし、何よりあの監督が優れていたのは采配の読みが異常なほど冴えていたということだった。

 チームでの対局では基本的に毎試合ごとにオーダーを変えて、試合開始時にようやくオーダーが発表されるルールが採用されていた。普通に麻雀打つ分には誰と当たろうが関係無いんだけど、特殊な人が増えていってからは相手のオーダーを読むのは結構重要なことだった。

 その点、あの監督は隙あれば私のお尻触ってきたり酒飲ませて酔わせて連れて帰ろうとする変態ではあったんだけど、対戦相手のオーダーを読み違えたことは一度も無かった。

 当然、対戦相手のデータとか所属選手の出場制限といったものを考慮していたんだろうけど、そういうのを考慮してたとしても異常なほどの的中率だった。

 本人は「何で競馬とか競輪とか競艇でその辺の的中率を発揮できなんだろう。勝つのを完璧に当てれたらいまごろ億万長者で幼女侍らせて豪遊できてたのに!」などと嘆いてはいたんだけど。キチガイに刃物を与えなかった神さま偉い。

 そんな監督の采配読みの才能のおかげで、私は個人戦のみならず団体戦でも小鍛治プロと存分に打ち合うことが出来た。直接打ち合いたいってワガママも聞いてくれて、ワガママ言ってる間は毎回意図的に小鍛治プロと打てるように取り計らってくれた。

 チームメイトはチームメイトで、私がワガママ言って小鍛治プロと打つことになっても「咏ちゃんがんばれー」って呑気に応援してくれた。本当は私のワガママ通すのはいけないことなんだけどね。チームにとっては。

 監督は人の目盗んで私の飲みかけのジュースをこっそり持ち帰ろうとする変態ではあったけど、チームの先輩たちは結構おおらかで、私が生意気な態度とっても笑うばかりで怒ったりはしなかったなぁ……いまにしておもえば全員の手のひらでコロコロ転がされて弄ばれてた気がするんだけど。

 昔の自分は本当に失礼な言動ばっかりだったから、いま思い出すと顔から火が出そうになる。いまでは先輩たちも引退したり移籍したりしたけど、いまでもたまに当時のチームメイトで集まって飲み会とかやってたりする。ただし監督は除く。

 いまでは現監督を除けば私がチームで最年長になってしまって、ようやく先輩たちの苦労がわかってきた――気がする。やたら迷子になる姉妹や、背が高いことで小さい子供に怖がられて泣かれてオロオロする子とか、色々とクセのある後輩たちのおかげで気苦労が絶えない。それが楽しくもあるんだけどねぃ。

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