白糸台高校・麻雀部監督の日誌-1-

記入日:2010年03月31日

1 今日から正式に白糸台麻雀部監督として就任することになった。それに伴い、監督としての日誌もつけていこうと思う。

 白糸台高校といえば西東京地区の強豪高校。かつては関西の千里山と並び称されるほどの名門校――だった。現在はインターハイ地区予選突破を二年連続で逃しており、公式戦で目立った成績を残せていない。

 唯一の救いはこの麻雀部に金があることだ。後援会に財界の有力人物が何人か名を連ねており、そこからの資金援助で設備面では全国一と言っても過言では無いだろう。コネ関係も充実しており、プロとの練習試合も一ヶ月に一度のペースで組むことができ、在籍しているコーチ達も元プロの肩書きを持っている。

 ただ、それがこの学校の癌となっている。監督としてこの学校に呼ばれた以上、長期的なことを考えて出来ればそれを何とかしていきたい。

 話を戻そう。今日から正式に白糸台麻雀部監督として務めることになった。本当ならもっと早く実地で仕事に就きたかったが、各種手続きや根回しに時間を取られて新年度が間近に迫ってようやく着任となってしまった。夫との離婚話も宙ぶらりんの状態だ。

 また話が脱線してしまった。ともかく、今日が白糸台高校での初仕事になった。地区予選突破を二年連続で逃しているとはいえ、白糸台の選手層は他校と比べていまのところは厚いと言っていいだろう。部員達にあいさつをしている時も、ちらほらと知った顔は見られたし、名簿でも確認できている。

 有力選手のいま現在の力を測るためにも、今日は照を連れてきた。自分に集まる視線に居心地を悪そうにしていたが、それでも照はいつも通りの力を見せてくれた。

 結果、照が圧勝した。正直なところ、もう少し善戦してくれるものと思っていただけに失望も大きい。しいて収穫があったといえば照を見て薄ら笑いを浮かべていたコーチ達の顔が途中から厳しいものに変わったというところぐらいか。ざまあみろ。

 顔色を変えたのはコーチ達だけではなく、生徒達も同じだった。恐怖、そして希望が混在した眼差しを照に注いでいた。新年度を迎え、一年生が――宮永照が麻雀部に入ってきたときにどのチームに入れられるか? それで自分たちの命運が決まることを悟ったからだろう。

 監督就任一年目の目標はインターハイ団体戦優勝。

 斜陽の名門校を立て直すにはそれしかない。


カテゴリー: 未分類 タグ: パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。