三尋木咏・回顧録覚書-16- 「二度あることは」

Date:2019年6月17日(月)

2 関東リーグから日本シリーズに進むことになったのは2チーム。

 一つは恵比寿レッドスナッパーズ。小鍛治健夜の所属チームであり、ここまで四年連続で日本シリーズ優勝を達成していた強豪チーム。前年度で熊倉トシ監督を始め、チームの中核を担っていた選手達を解任したものの、エースの小鍛治健夜の存在は大きく、未だ優勝の最有力候補として挙げられていたチームだった。

 そしてもう一つが横浜ロードスターズ。シーズン中は同じ関東リーグの恵比寿に勝ち越し、チームメイトの成績は全員好調。チーム一丸となって優勝を目指して動き続けてきた。

 恵比寿とは日本シリーズの決勝で雌雄を決するはずだった。

 でも、日本シリーズ期間中にある事件が起きた。日本シリーズ決勝を控えた恵比寿レッドスナッパーズの選手達が次々と何者かに襲われ、重症を負わされるという事件が。

 中には意識不明の重体になって運ばれる人もいた。

 幸い、チームのエースである小鍛治健夜は――「たまたま」訪れていたオーナー達に食事に誘われていたため――宿泊先から出ることは無く、襲われはしなかったものの、小鍛治プロと監督を除く全員が入院し、彼女らは日本シリーズ決勝への出場が不可能となった。

 恵比寿の首脳陣は日本麻雀連盟が設立当初から制定していた「事故等でチームの人員足りなくなった場合、欠員の補充をチーム外から行ってもいい」という、今まで一度も使われていなかったルールに則って欠員の補充を行うために動き出した。

 そして「たまたま」日本に訪れていた海外の実力者に協力を要請し、彼女らは「快く」恵比寿の要請を受け入れ、日本シリーズ決勝限定でチームに加わることになった。

 恵比寿の戦力は小鍛治健夜に加えて世界でもトップクラスのメンバーが補充され、日本シリーズ五連覇はほぼ確実と言われるものになってしまった。

 多くのマスコミがそれとなく手を回されていたのか、この事件を「恵比寿レッドスナッパーズを襲った悲劇」として報道した。実際、襲われた選手たちは何も知らされてなかったと思う。

 結局、恵比寿のメンバーを襲った暴漢達は捕まらなかったために何の証拠も無かったけど、多くの人が自作自演の線を疑ったと思う。ただ、いくら何でもそんな暴挙に出るとは誰も実際に事件が起こるまで考えもしなかったはずだ。

 ただ、私は恵比寿の上層部の誰かが、恵比寿の五連覇を達成するために手を回したことを知っていた。

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