三尋木咏・回顧録覚書-17- 「叱咤」

Date:2019年6月17日(月)

1 あの人が――私の育ての母だった人が私の前に現れた理由は後になってわかった。

 警察に捕まった後に「自分の人生を台無しにした三尋木咏の人生を台無しにしてやろうと思った」とか「これは正当な復讐だ」とか言ってたみたい。そして、裁判を前に牢屋で舌噛みきって……。

 話を戻そう。

 私は継母だった人にナイフで殺されかけた。

 それなりに修羅場くぐったつもりだったけど、自分の前に現れた女の正体がわかったら、逃げようにも足がすくんじゃってね。普段から生意気な口聞いてるくせに、いざとなったら自分がダメなやつだってわかったよ。

 怖かった。

 逃げないと、って思いつつも身体が全然動かなくって。

 振りかぶられたナイフが頭に向かって落ちてきても、全然動けなかった。

 でも、私は刺されなかった。

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