三尋木咏・回顧録覚書-3- 「餡蜜」

Date:2019年6月17日(月)

1 まあ、例の爺さんの話は置いとこう。

 小さい頃からたまに会ってたけど、本格的につるむのは後の話。

 お父さんの両親、私の祖父母はまだ存命だったけど、母親の両親はもう亡くなっていたからたまに墓参りとか行ってた。二人とも病気で死んだらしい。

 私は何とも現金なことに墓参りの後で行く甘味処の餡蜜が大好きだったから、それ目当てで母親に付いて行ってた。墓参りの最中に母親に「あんみちゅ、あんみちゅ」って言って困らせたこともあったっけ。

 お父さんも大抵一緒に来てくれてた。

 来てくれてたけど、私と母親が餡蜜食べに行くころにはだいたい仕事に戻ってたかな。海外出張や夜遅くに帰ってくることも多かったけど、私が玄関まで迎えにいくと疲れた顔一つ見せずに抱っこして運んでくれた。

 仕事忙しいお父さんではあったけど、誕生日とか大事な日にはちゃんと仕事早く切り上げて一緒にいてくれた。幼稚園に入ったらお遊戯会の日とか何か行事がある時も時間調整して来てくれてたっけか。

 幼稚園にはいつも母親が迎えに来てくれてた。運転は運転手さんに任せて、私は後部座席で幼稚園であったこととかを母親に話してた。母親はそれを笑顔で聞いてくれて、たまに寄り道して一緒に甘いもの食べて帰ったりしてたっけなぁ。

 私は大抵いつも餡蜜頼んでたけど、墓参りの後で行く餡蜜が一番美味しかった気がする。

 小学校に上がって以降は行ってない。

 ただ、美味しかったことはちゃんと覚えている。

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